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〜稲作コスト低減の考え方と対応技術〜

稲作コスト低減の考え方と対応技術

農業就業人口が急速に減少する中で必要とされるのが、省力化によって一人当たりが作業できる面積を拡大していくこと。本稿では稲作のコスト低減のための考え方と、クボタがご提案する技術についてご紹介します。
(この記事は、平成28年11月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.34』を元に構成しています)

はじめに

2015年農業センサスによれば、農業就業人口は2005年から10年間で40%近くも減少し、また、平均年齢も高齢者に区分される65歳を超えています。これに対して耕地面積は数%程度の減少に止まっています。
3つの生産要素である「土地」「労働」「資本」のうち資本は減少する状況にないことを踏まえると、現在、最も貴重・希少な資源は労働力、すなわち「ひと」であり、日本農業の最大の課題は、減少する労働力にどう対処するか、であるといえます。

「省力」技術の考え方

省力技術は、10a当たり投下労働時間をいくら減らせるか、と表現されますが、逆に見ると、1時間で作業できる面積、あるいは1人で担える面積が増える、とも言えます。労働力が大幅に減少していく状況では、1人でどれだけの耕地面積を担えるか、が極めて重要であり、新たな「省力」技術も、その導入で1人が担える面積がどれだけ増えるか、という視点で考えるべきでしょう。
さらに言えば、1人で担える面積が増えることは、1人が手にできる収入が増えることでもあります。高齢化が進行する中で農業を維持・発展していくためには、農業外も含む新規就農者の増加が不可欠ですが、その場合、当然ながら農業においても他産業並みの収入が必要でしょう。農業を魅力的な就業の場とする上でも、1人が担える面積の拡大はたいへん重要です。

コスト低減の経路と技術組み合わせ効果

日本再興戦略(平成25年閣議決定)で、担い手のコメ生産コストを、今後10年間に現状全国平均(1万6千円/60㎏)から4割削減することが決定されるなど、低コスト化は国の主要な政策課題となっています。
コスト低減の方法として、直接的には10a当たり投下費用の削減があります。種苗、肥料、農薬等の資材を減らしたり、前述のように労働時間を削減したり、といった対応策です。しかし、病害虫が発生しているときに農薬は減らせませんし、後で述べる多収品種の導入を考えると安易な減肥もできません。無駄な投入がないかを精査し、材の種類や量を見直す程度でしょう。

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やはり、コスト低減の主要な方法、経路は、前に述べた、1人で担える面積を拡大できる省力技術、ここでは少し言い方を変えて、主要な農機1台の体系でまかなえる面積を拡大できる技術の導入でしょう。
例えば、1台のトラクタに作業機を付けて耕起、代かきをし、1台の田植機で1品種を適期に移植できる最大が10haと仮定しましょう。田植機を播種機に代え、より効率的な直播栽培に切り替えることで20haまで栽培できるとすると、トラクタや作業機の10a当たり費用(減価償却費)は半減できることになります。さらに、移植と直播の作業時期が競合しない(ずれている)とすると、合わせて30haの栽培が可能で、トラクタや作業機の費用は、当初の1/3まで低減できます。コスト低減効果は、単独の技術導入よりも技術の組み合わせで、より高まるのです。

品種組み合わせと多収品種の導入

前項で1品種での移植の最大が10haと仮定しました。ここで、例えば早生と晩生等熟期の違う品種を組み合わせると、移植のみでも栽培可能な面積は増加します。これに直播適性があり熟期も違う品種を組み合わせたら、さらに面積拡大が可能です。有名な茨城県龍ケ崎市の「有限会社横田農場」では、直播栽培の導入と7品種の組み合わせにより、コンバイン1台で130ha余もの生産を実現しているのです。
ここまで、10a当たりのコストについて述べてきましたが、日本再興戦略の目標は1俵(60㎏)当たりです。10aたり収量が増えれば、当然、1俵当たりコストは低減します。収量増に伴う乾燥費用等の増加は微々たるものなので、例えば10a収量9俵が12俵になると、1俵当たりコストは2割以上低減されます。収量向上を目指す技術さらには多収品種の導入は全費目に包括的に関わるため、大きなコスト低減が可能になるのです。ただし、作業分散となるよう熟期に留意することが重要です。

クボタが提案する技術

当社はこれまで水稲鉄コーティング直播栽培技術(以下鉄コ)の開発を進め、播種作業だけでなく、施肥や農薬散布も含めた「体系」技術を構築して参りました。また、PFコンバインとKSAS(クボタスマートアグリシステム)を連動させることで、適正な施肥量の下での収量向上を圃場単位で実現することも可能にしてきました。さらに、組み合わせ技術として、移植栽培で苗箱数削減を可能にする密播苗移植栽培や乾田直播栽培へも対応できるようになりました。これらの技術については別ページで概要を紹介していますが、コスト低減との関連性について少し触れてみます。
例えば鉄コ等直播は、省力(省時間)効果によって労働費削減に貢献しますが、同時に省力(ピーク低下)効果で規模拡大に貢献するため、固定費の低減にも繋がります。そして播種作業と同時に農薬散布が行えるこまきちゃん、土なかくんを加えることで、さらに効果が高まるのです。

また、KSASは、投入肥料の適正化により変動費低減効果が得られますが、圃場ごとの作業時間分析等を通じて効率的な作業進行が可能になり、労働費低減効果も得ることができるのです。

これらの技術のうち、鉄コと密播苗移植栽培に取り組んだのが「㈱あぐり三和」の事例です。

平成23〜26年に実施した全国農業システム化研究会の実証結果を基にした試算では、春・秋の農繁期の労働時間を増やさずに稲作面積を24%程度拡大でき、事業利益を4割程度増加できる、と推定されています。

機械化による低コスト稲作の実現 低コスト稲作機械化作業体系

鉄コーティング直播

【鉄コーティング直播のメリット】

① 育苗・移植に伴う作業が省略され、播種作業も1人でできるため、大幅な省力化が図られます。

② 育苗関連の設備・資材費の大幅な削減が可能です。

③ 移植・直播を組み合せることで作期分散でき、稲作経営の規模拡大と、一層の省力・低コスト化が図られます。

④ 鳥害や病害の発生が少なくなり、生産性が向上します。

⑤ 農閑期に種子の準備ができ、長期保存が可能です。

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密播苗移植

【密播苗移植のメリット】

① 慣行の移植栽培と同じ育苗機材や機械装備で対応が可能です。

② 育苗期間が短縮でき、育苗労力の削減が可能です。

③ 苗箱の運搬量や田植機への補給回数を減らすことができ軽労化が可能です。

④ 育苗施設や資材のコストが大幅に減らせます。

⑤ 直播栽培や疎植栽培と組み合わせることにより、省力・低コスト効果は、さらに大きくなります(株数は、地域、品種によって無理のない範囲で減らします)。

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乾田直播

【乾田直播のメリット】

① 育苗・代かきおよび移植作業が省略できるため、移植栽培に比べ作業労働時間と生産費を大きく削減することが可能です。

② 代かきを行わないため、圃場の排水性が改善され、乾田化で地耐力が向上します。

③ 圃場の区画が大きいほど有利になりますが、大区画圃場では均平が重要になります。

④ FOEAS(地下水位制御システム)や集中管理孔を利用した地下灌漑施設など、給排水施設が備わると水管理が容易になります。

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おわりに

本特集で紹介したそれぞれの技術は、地域の気候・気象条件や作付体系によって、経営への具体的な取り込み方は異なってきます。今後は地域毎の実証を積み重ね、それぞれの地域に適した、より現実的な営農モデルに基づいて技術提案を進めて参ります。

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