1. HOME  >  
  2. 営農情報  >  
  3. 農業の未来を語る特別対談「業務用野菜作りに見る ービジネスとしての日本の農業ー」

情報誌「ふれあい」No.36

〜農業の未来を語る特別対談「業務用野菜作りに見る ービジネスとしての日本の農業ー」〜

農業の未来を語る特別対談「業務用野菜作りに見る ービジネスとしての日本の農業ー」

近年、消費者の生活スタイルの変化によって、外食化や中食化(総菜やお弁当など)が進み、業務用の野菜作りが今、注目されています。今回は三重県名張市で、そんな業務用の野菜作りを手掛けられている農事組合法人 忍の里にうかがいました。業務用野菜作りから見た日本の農業や未来はどうなのか。興味深いお話をしていただきました。
(この記事は、平成29年9月発行のクボタふれあいクラブ情報誌「ふれあい」36号を元に構成しています。 クボタふれあいクラブについては、お近くのクボタのお店までお問い合わせください。)

輸入されている身近な野菜を国産化できればビジネスになる。

加藤氏(以下、加藤)本日は、三重県名張市で業務用の野菜作りをされている農事組合法人 忍の里さんにうかがいました。いつもと違うお話と出会えそうで ワクワクしています。山本さん、よろしくお願いします。

山本氏(以下、山本)こちらこそ、よろしくお願いします。今日は加藤さんにお会いできることを楽しみにしていました。

加藤 本当ですか(笑)。ありがとうございます。
まずは、忍の里さんと山本さんの自己紹介をお願いします。

山本 僕はもともと土木の仕事をしていました。48歳の時に工学系の大学に行かせてもらい、卒業後、農業をしたいと思ったんです。
そこで、その勉強をするために三重大学のある先生に相談したところ「受験しなさい」といわれましたので、逆に「人を集めるから講師で来てください」とその先生にお願いしたんです。その時のテーマが、輸入野菜の中で一番身近な野菜を国産化していくことでした。
そして2007年に業務用野菜を生産する農事組合法人忍の里を設立しました。ここでは今、レタスや水菜、小松菜などを作っています。また岡山県の笠岡にもほ場がありまして、そこでは主にキャベツ、玉ねぎ、かぼちゃを生産しています。

加藤 規模的にはどのくらいでしょうか。

山本 名張は4ha、笠岡は70haですね。笠岡の方は有限会社エーアンドエスといいます。

加藤 笠岡は大規模にされていますね。

山本 300haくらいにはしたいと思っています。その規模ですから、加藤さんにうかがいたかったのが機械化のことです。
いつ頃に本当に役立つ農業ロボットができるのか、また、農業生産の事業計画を立てるにあたり、費用対効果的にいつ頃導入したらいいか、そこを知りたいと思っています。

加藤 ここの倉庫に入ってまず驚いたのが、きちんと整理整頓されていることです。山本さんの前職の経験によるものだと思いますが、機械化やロボット化には整理整頓が前提条件なんですね。その上で、誰が、何時間、どんな作業をしているのかを整理していることが重要になります。業務フローで、賃金×作業時間で労務費を算出していただくと、どのくらいの価格でどんな機械やロボットを導入すれば、費用対効果としてプラスに転換できるのかがわかると思います。
その辺りは何かされていますか。

山本 作業日報ですね。ただ、生産時間の基準というのがあまりわからないのですよ。例えば、キャベツ作りで何時間が、いい農事組合法人なのか、明確な指標がないんです。
現在、機械化一貫体系を実現すれば、10aあたりの労働時間が玉ねぎで31時間、キャベツで35時間になるといわれていますが、これを20時間に削減できれば、海外の生産コストとあまり変わらなくなるそうです。まずはそこを目指したいですね。そのためにはいっそうの機械化が必要だ、と思っているわけです。

加藤 なるほど。今、ITを活用したいろいろなツールが出ている中で、最近ようやく作業時間に注目したツールが出てきました。この考え方は、そのまま農業にも応用できると思いますよ。

山本 その辺はまだ勉強不足ですね。ただ、KSAS(クボタスマートアグリシステム)を昨年導入しました。

加藤 野菜農家さんでもKSASを活用されているんですね。

山本 まだ完璧には運用できていませんが、作業の記録、情報の共有、振り返りが簡単にできますので重宝しています。ただ、現状はどちらかというと米にウエイトを置かれているのかなと感じることもあります。野菜でも、もっと活用できるようになることを期待しています。

ルールは自分で作る。だからクレーム処理も自己責任で対応する。

加藤 少し話をロボットの方に戻しますが、昨年私は長野県の安曇野のリンゴ農家さんの労務分析をさせていただきました。安曇野ではリンゴを20等級くらいに分類するんですね。農家さんの所でまず10通りに分類します。そこで、あるメーカーさんが、リンゴの運搬は大変なのでそこだけでもロボット化してみましょうと、集荷場と収穫の現場をレールでつないで自動化したんです。私もラクになるだろうと思っていました。でも、そこだけ自動化しても集荷場で分類する作業があるため、そこでリンゴが山積みになっていくんです。全体として全然速くならず、自動化はまだ早い、という結論になりました。作業体系に合っていなければ、ロボット化の効果が出なくなってしまうのです。

山本 今、リンゴ農家さんには規格が20もあるといわれましたが、その規格は誰が作ったのでしょうか。僕は業務用野菜を生産しているからですが、ルールは自分で決める。出荷規格は農家が決めた方がいい、そう思っています。その中で農家としてプレイさせていただく、それが私のスタンスですね。ですからクレームが出た時は中間業者の方と一緒に僕も出向いてクレーム処理をします。それで翌年の出荷の話もできます。クレーム処理を自分でするためにも必要なことではないでしょうか。

加藤 作ったものに責任を持つということですね。素晴らしい。

山本 当社では玉ねぎやかぼちゃをたくさん作っていますが、極端な話、「こんな玉ねぎ売れるの」「こんなかぼちゃ売れるの」とJAさんが不思議に思っていますよ(笑)。

加藤 「こんな」、というのは規格としてですか。

山本 そうです。うちでは、かぼちゃ1kg以上全部OKです(笑)。

加藤 どんな形でも(笑)。

山本 多少規格はあるんですよ、AとBくらいですが(笑)。それで全部売れますね。実は今年もまだ収穫は残っていますが売り切っていますし、来年の予約はその倍を聞いています。つまり、売り先に合わせた規格であれば、ちゃんと売れるんです。大切なのは、それをいかに効率的に、労働時間を短縮して生産していくかですね。

加藤 できそうですか。

山本 やらなければならないんです。そのためにも、クボタさんに期待しているところです(笑)。本当に今、農家が望んでいるのは、ロボットよりも生産コストを低減できるようなトラクタとか農機具なんです。



加藤 本当にそうですね。ところで、(青果)市場についてはどうお考えですか。

山本 市場は必要だと思います。確かに業務用野菜作りをしていると「市場はいらない」という声を聞くことはあります。でも、市場と産地とのつながりも大切ですし、拒絶するのではなく一緒に中に入っていただけたらな、と思っています。

加藤 市場の方も苦戦していて、例えば私の地元静岡もこのままでは自然消滅してしまうかもしれないと不安になっている仲卸さんたちが多くいます。

山本 僕は市場に頼るんじゃなしに、市場の持つ機能を生かす、組織に頼るんじゃなしに、既存の組織が持つ優れた機能を生かす、それが大事なんじゃないかと思います。例えば、使われていない出荷施設や物流システムなどを使わせていただく。そのかわり営業は僕がして、例えば、JAさんに相手先も全部紹介します。ですから笠岡の方は100%JA出荷です。

加藤 そうなんですね。既存の機能をしっかり活用していらっしゃるということですね。

山本 一つも自分で売りません。お好み焼き屋さんがキャベツを買いに来ても売らないです。また、全農さんは、さまざまな手続きを窓口でやってくださいます。組織体と一緒にする方が効率がいい、そんな感覚でいます。

僕の夢をかなえてくれる人と出会い一緒に仕事をしていきたい。

加藤 話は変わりますが、ホームページに品種改良をされているとあります。でも、ご専門は土木ですよね。どうされているのですか。

山本 品種改良をしたい人を探してくるんです(笑)。ロボットを作りたいと思ったら、ロボットを作れる人を探してきます。それが僕のやり方です。僕の夢をかなえてくれる人を探すこと、それが一番の楽しみですね。また自社で作ったものは、例えばプログラムもずっと動き続けます。35年前に中学生に作ってもらったプログラム、今も動きますよ。

加藤 えー、本当ですか。

山本 初めてパソコンを買った時、僕はプログラムができないので、その中学生に依頼しました。それがまだ動いているんです。ノウハウは自社開発した方がいいんです。修正がききますし、ずっと使えます(笑)。

加藤 その通りですね。ITベンチャーも、最近では人を雇って内製化するのが、常識になってきています。そういう意味で、人材の教育は、どうされているのですか。

山本 僕は教育などできませんから、例えば車屋さんに勤めていたベテランの方がいれば、若い人に塗装のやり方を教えてあげて、と伝えられればいいかなと思っています。

加藤 なるほど。山本さんはどんな方を採用されるんですか。

山本 一番は企業で長年働いてこられた60歳を過ぎた人ですね。私の所にも一人いますが、そういう人たちは考え方がしっかりしています。若い人には、その人たちの後ろ姿を見て学べと。僕は教えることはできませんから、あの人はいい考え方しているよ、それを見たらどう、といいます。

加藤 そうやって真似したらいいと。静岡は面白くて、製造業にいたシニアの方たちが、2時間か3時間、運動がてらにパートとして農家さんのところで働くんですね。そうすると彼らは、5S※1とかPDCA※2の中で生きてきたので、白板の書き方から直していくんです。その結果、すごく効率のいい農業生産体系になっている現場があります。

山本 ちゃんと企業で学んでこられた方というのは農業にとっても大切な人だと思います。お金を出してでも学ぶべきだと思いますね。

加藤 農工連携はこれからの大事なキーワードかもしれませんね。

※1 5S:整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字の5つのSをとったもの
※2 PDCA:Plan(計画)→Do(実行)→ Check(評価)→Action(改善)を繰り返すことで、業務をどんどん改善していく手法





農業をして、たくさん有給休暇の取れる会社へ。そのため機械化と効率化を追求。

加藤 山本さんがこれからどう進化されるのか気になります。

山本 今やろうとしていることがブレないようにしていきたいですね。もし、究極のロボット、例えば、単純作業の草取りや虫取りをするロボットができたら、有機農業や無農薬農業をすると思います。
でも、今はまだ途中過程ですしビジネスで農業をしているわけですから利潤を追求します。業務用野菜のかぼちゃ、玉ねぎ、キャベツの3品目の国産化をさらに進めるのが、近い目標です。その後は、若い人が就農しやすい環境づくり、特にロボットの購入資金のことなどをちょっと応援できたら楽しいかなと。
あとは有給休暇をしっかり取れる会社にしていきたい。

加藤 やはり、なかなか取りにくいのですか。

山本 今は難しいですね。でも、なんとか実現したいです。それをどうシステム化するのか。だからこその機械化と効率の追求なんです。僕は、楽しみにしているんですよ、これから2〜3年のロボットの進化を。生産技術が低いところに、それをカバーできる機械があれば収量が上がります。本当にクボタさんに期待しています。

加藤 そうした機械というか、ロボットの研究開発はこれから本当に大切なことですね。

山本 ある新聞に載っていたのですが、今、日本にロボティクス学科があって、かつ農業用ロボットの研究をしている大学が9か所ほどあるようです。実は、現状を調べに、どこかの大学を訪問しようかと思っているところなんです。

加藤 ぜひ、私が客員教授をしている信州大学にもいらしてください(笑)。農家の方や民間の企業の方にどんどん来ていただきたいですね。それがいい刺激となって、研究成果がきちんと製品に結びついて農業の経営に役立てばいいなと思っています。

山本 それを私たちが喜んで買える価格で販売してもらえれば、もう、その大学と会社に足を向けて眠れませんよ(笑)。

加藤 そうやって生産性が向上していけば、有給休暇がもっとたくさん取りやすい農事組合法人になれますね。

LINEで送る
ツイート
Facebookで記事をシェアする
このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページトップへ

menu

menu