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情報誌「ふれあい」No.37

新たな仕組みを考える

〜人と地域を未来につなぐ農業〜

人と地域を未来につなぐ農業

各地で盛んになっている農業の複合経営。
今回は、米どころ新潟県の上越市柿崎で稲作を基盤に野菜づくりにもチャレンジし、独自の考え方や手法で人づくり、地域づくりを進めている農業生産法人の株式会社ふるさと未来を訪れました。
これからの農業のあり方や地域への思いなど、熱く語っていただきました。
(この記事は、平成30年3月発行のクボタふれあいクラブ情報誌「ふれあい」37号を元に構成しています。 )

仲間たちと一緒に農業を通じて地域づくりをしていきたい。

加藤氏(以下、加藤) 今回の訪問先は新潟県上越市柿崎にある株式会社ふるさと未来さんです。会社の周りのほとんどの田畑を運営されているそうでびっくりです。そんな農業経営についてお話をうかがいたいと思います。
髙橋さん、よろしくお願いします。

髙橋氏(以下、髙橋) こちらこそ、よろしくお願いします。

加藤 まずは髙橋さんと、ふるさと未来さんのことをご紹介ください。

髙橋 以前、この地域にはいくつか農業グループがあったのですが、行政の指導もあり、一つにまとめていくことになりました。その頃の私は企業に勤めながらのお手伝いだったため、誰かがまとめてくれればいいという気持ちでした。ただ、なかなか前に進みません。高齢化も進んでいきます。私も会社で地位が上がり、休んでまで農業ができなくなりました。そこで、これまでの経験を活かせば何とかなると意を決し、会社を辞めてこの仕事に就きました。

加藤 英断ですね。会社に残っていれば悠々自適に暮らせるライフプランが立てられるのに。

髙橋 ただ、週末や休みの日には必ず来て手伝っていましたし、なによりこの地域が好きなんです。子どもたちの声がして、日向ぼっこしているお年寄りがいる。そういう風景の中で自分たちの子どもや孫を育てられたらいいなと思ったんです。近くの公園も地域のみんなで作ったんですよ(笑)。最初、私が一人で草刈りをしていたのですが、そんなことは一人でするものじゃない、と仲間が十数人集まってくれたんです。

加藤 夢がありますね。農業をしながら地域や社会づくりを目指されている会社なのですね。

髙橋 よくいいますのが、地域が残っても農業は残らない。でも農業がちゃんと残れば地域もちゃんと残る。そういう地域を含めた農業を継続していきたいと思っています。

加藤 規模的なことですが、いま田んぼはどのくらいあるのでしょう。

髙橋 水田で62haくらいです。今年は水稲を50haくらいしか作らず、あとは枝豆やブロッコリー、ハウスでトマトを作っています。今の会社の代表に就いた当初はもっと大規模に、と考えていましたが、まずは私を含めて社員5~6人の規模で基礎を作ることを主眼にしています。

農業は一人ではできない。
広い視点で地域で連携する。

加藤 先ほど、地域を含めた農業の継続とおっしゃいましたが、私も静岡で持続可能な農業のための方法をあれこれ進めていますが、髙橋さんはどんなことをお考えでしょう。

髙橋 私は農業は一人ではできない、地域みんなでやっていくものだと思っています。例えば、中山間地の問題がありますが単独で何とかしろ、といわれています。でも、それは無理だと思うんです。ですから、中山間地は高付加価値のものだけを作り、あとは平場で高収益になるものを作るなど工夫をして、中山間地と平場をトータルに考え、一つの経営体でやるべきだと思っています。

加藤 そういえば、ある棚田はデートスポットになって人が来るようになりました。すると、みんなで棚田をサポートする体制ができたんです。考えればいろんな方法がありそうですね。

髙橋 狭い地域で考えるのではなく、もっと広い視点で考えていくべきですね。また、都市部の人たちにもできる土日の仕事を作りたい(笑)。例えば、中山間地に車で行ってもらい、田んぼの水の様子をチェックしながら散歩して、スマホで写真を撮って送ってもらってその代金を支払う。そんな健康にもよく、収入も得られる仕組みができればと思っています。実際、そうした力を借りないと労働力不足は解消できないと思います。

加藤 面白いですね。髙橋さんが中山間地のことをまとめられたらいいのではないでしょうか。

髙橋 私は、委託を受けて規模を拡大していくというより、集落が一緒になって、高齢者など機械更新ができない人もあとあとまで仕事ができるようにまとめていただき、みんなで地域を耕していく、そういうやり方のほうが好きですね。

加藤 機械も人も若い人にうまく引き継いでもらって、地域を大切にしながら農業を継続していく形ですね。

一年中収穫をするための仕組みづくりを進めたい。

加藤 話は少し戻りますが、水稲も園芸もされています。独自のやり方でされていることはありますか。

髙橋 時間軸のグラフを作っています。例えば、水稲は4月から10月の初めまでの作業で、大豆の収穫はその後、というように仕事の段取りを濃淡をつけて見ていくと空いている時間が見つかります。一年間何かを収穫できるようにするために、そこに何を入れようかと考えるのですが、実際にやってみると田植えと同時に、枝豆の播種や定植の仕事があるんです。収穫期をずらすためにやっているのに、実はいろいろしなければならない(笑)。ですから水稲は極力省力化して時間を作り、余った人手を別の方に回したり、臨時の人を雇って作業をしています。作業のデータ化を含め、スケジュールをうまく組めるような決まりごとができれば、標準化したスケジュール表ができるはずです。この考え方を社員みんなが今の作業の中で共有していければと思っています。

加藤 そのために何かツールを使われているのですか。

髙橋 特別なものはまだ使っていません。今は社員みんなにモバイルをもってもらい、意識付けのために情報を見ながら作業を進めている段階です。まだ水稲中心ですが、そうした訓練をしながら意識を変えて、今後の仕組みを作ろうと考えています。社員である以上、若くても臨時で雇われる人の上に立って指示しなければなりません。指示をするためには、すべての作業を理解しておく必要がありますから。

加藤 本当にそうですね。社員さんがマネージャーとして髙橋さんのもとで育ってくると、その人たちが一つひとつの作業を上手に細分化して、各作業をいろんな人や業者さんに委託していくという形になっていくんじゃないでしょうか。

髙橋 大事なことは、作業を熟知した人が中心になることです。農業は今まで経験がものをいう仕事だったのですが、例えば、容器のこの線まで水を入れてください、というくらいに作業を細切れにすれば、誰にでもできるようになります。それをトータルにコーディネイトできる人がいればいい。

加藤 本当にそう思います。

社員は共同経営者。
できる限りのものを継承してほしい。

加藤 ふるさと未来さんには若手の方もいらっしゃいますが、人の育成や思いの継承などをどのように進めていこうと思われていますか。

髙橋 今実践していることをマニュアル化して、引き継げるようにしたいですね。私たちは植物を育てていますから、二、三日休もうと思えば、誰かに代わりをしてもらわなければなりません。逆に自分も誰かの仕事をしなければならないわけです。つまりマニュアル化して誰もがお互いの仕事をきちんとできるようにする必要があります。それができれば、「一週間よろしく」といって遊びに行けます(笑)。そして次の経営者を見つけてきて、若者たちと一緒にやってもらえる基盤づくりを手伝いたいですね。私は無形の財産といっているのですが、ネットワークづくり、仲間づくり、販売の仕方や考え方、グローバルGAPなど、お金では買えないもの、目に見えないものをできる限り財産として残していきたいと思っています。

加藤 何か、会社の理念はあるのでしょうか。

髙橋 継続していける組織を作る、というのが最初からの理念です。我々はずっと継続するんだ、だから絶えずいろんなことを引き継いでいけるように、今から作っていくんだ、ということです。つまり、社員は共同経営者という考えです。

加藤 面接のときからそういう姿勢なんですね。

髙橋 最初にいいます。単なる社員ではなく、将来一緒になって経営してくれる人を求めているんだと。

加藤 すごくハードルが上がってびっくりされませんか。

髙橋 そうかもしれませんが、面接に来た人には、実際の経営は社長がしますから、それより、こういうものを作りたい、と参加していただいて責任をもってそれに取り組んでほしい。その見返りとして、賞与はみんなで分けます。だから共同経営者なんです、といいます。

加藤 それはいいですね。そういう話をすると分かりやすい。

髙橋 やれといわれたことだけをするのではなく、みんなで協力して利益を出さないとボーナスが出ないんだよということです。

加藤 そういう会社がいいですね(笑)。

雪国だからこその発想で、いろんなことに挑戦したい。

加藤 ところで「雪熟野菜(せつじゅくやさい)」についてですが、どういったものでしょうか。

髙橋 雪の力を借りて熟させた野菜という考え方です。これを雪国のテーマとしてやっていければ面白いと思っています。雪に覆われたり、寒い気候で育った野菜は、見栄えが悪くてもおいしいんです。その野菜を雪の降らないところに販売したいなと。お金持ちもいっぱいいますし(大笑)、という夢があります。近くの津南の方でも雪下野菜としてニンジンなどを作っていますが掘り出すのが大変なんです。雪が消えてからか、費用をかけて重機でするしかありません。私の考え方は、注文が来ればその分だけ出せること。ですから採れるものは採って雪の中に保管し、いつでも出せるような状態を作りたい、と思っています。

加藤 聞いただけでもおいしそうです。南国には出せない味ですね。

髙橋 まだ流通の問題や保存の課題がありますので、みんなで試験をしています。

加藤 雪ごと送ってください(笑)。静岡は本当に雪が積もらないので、姉妹都市提携している長野県の市から毎年雪をトラックで運んで雪まつりをしています。でも午前中しか雪がもたないんです。

髙橋 こちらでも暖冬で雪の降らない時期があります。そうすると野菜が傷んでしまいます。その対策を考えています。必ず雪が積もるところと仲間になって、そこにもっていけばいいのかとか(笑)。農業は一人ではできないわけですし、その方たちはその方たちで春まで掘り出せない。だからうまく連携できればと思います。まずは自分たちで、やり方を確立していきたいですね。

加藤 雪ごとお待ちしています。高く売れますし子どもも大喜びです。

髙橋 そういうことも含めて「何でもあり」でやりたいですね。

加藤 それこそ若い人たちとか、固定観念のない人たちにやってほしいです。

髙橋 これまでの農業的な固定観念ではなく、基本には忠実ですが、基本以外はどんどん挑戦したいですね。

加藤 いろいろ熱い思いをお聞かせいただきました。ありがとうございました。

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