うね間の管理作業に、大活躍のJB13XNM。豊富なアタッチメントを揃え、ほとんどの作業が「乗って」行えます。今回は京の伝統野菜「えびいも」の生産拡大、新たな担い手確保に、JB13XNMをフル活用しようと、地域ぐるみで2021年から実証に取組む様子を年間を通じてご紹介します!
超幅狭トラクタJB13XNM(13.5PS)
今回はえびいもの機械化一貫体系を密着取材!
「乗用」を前提とした、えびいもの機械化体系確立を目指す
京の伝統野菜の一つ、えびいも。さといもの一種で、縞模様とエビのような形から、縁起物としておせち料理に使われる等、重宝され現在でも安定した需要があります。「えびいもは、普通のさといもと比べ単価が高く、高収益作物です。11月以降に収穫し、夏野菜と競合しないことから、仕事が減る冬場の収入確保になるものとしてお勧めしています」と話すのは、実証の中心メンバーでもある京都府中丹西農業改良普及センターの黒川さんです。
しかし、規模拡大を図る上で、課題に挙がっていたのが土寄せでした。「中丹管内では、メインの作物を栽培しながらプラスアルファで取組むケースが多く、手を掛けられないため歩行型の管理機で作業する方が多いです。暑い時期に何回も行うことから重労働で、生産量が減りつつありました。」何か手立てはないかと、北陸近畿クボタ 福知山営業所の片桐さんに相談。提案を受けたのが、土寄せを「乗って」行うことのできる、超幅狭仕様の小型トラクタ、JB13XNM(モンロー付)でした。
JB13XNMは、標準仕様のトラクタ(JB13X)に比べ、後輪外幅が770㎜と狭く、余裕を持ってうね間作業が行えます。「えびいもは成長すると葉が大きくなり、普通のトラクタでは爪で葉を巻き込む恐れがあるので、活用できると思ったんです。アタッチメントが豊富でこれ1台で色んな作業ができることも魅力です」と選定理由を挙げる片桐さん。実証では、うね間を150㎝に設定。土寄せを重ねうねが高くなっても、トラクタが走りやすい幅にしています。
複合作業で省力化、時短を図る!
トラクタ体系だからこそ実現できる。
2022年の実証は、4月の額縁明きょの施工と、定植用の植付け溝堀りからスタートしました。「逆転ロータリにマックスロータと、残効処理板を装着して作業しました。「残効処理板が、定植溝を均すので溝深さも幅も均一にでき、植付けが安定します。」作業前日は雨が降り、溝が掘れるか心配していたそうですが、「JB13XNMは、13.5馬力と管理機に比べパワーもあるので多少の無理が効きました。土が湿っていると管理機では土が大きく飛ばないので、きれいに溝が掘れなかったでしょうね。」と仕上がりに満足しています。
6月には1回目の土寄せを実施。「今回は逆転ロータリに、埋め戻しロータを着けています。えびいもは、土が上から入らないと変形し、品質が低下する恐れがあることから、外側の爪を左右入れ替えて外向きにすることで、株元に土がしっかり掛かるように工夫。最初爪が苗に当っていたので、外側の左右の爪を外し対応しました。爪軸も3分割でき、お客様のほ場に合わせ調整できるのがメリットです。」
実際に作業を見た黒川さんは、「狙い通り株元に5~10㎝ほど、土を寄せることができ満足。雑草についても株元の際まで生えていたので、手取りの必要があるかなと思ったのですが、株元ギリギリまで爪が来て、予想以上に除草できた印象です。」
また今回は、前装タイプの施肥機も共着。「えびいもは、追肥で大きくなるので、施肥もしました。効率良く均一に撒け、時短にもなります。」複合作業を行うことで、規模拡大もしやすいと片桐さんは言います。黒川さんも 「管理機体系だと、200~300株しか作れないところ、ほぼ全ての作業をトラクタで行うことで、1000株、2000株の単位で作付けできるのではないか」と期待します。
幅広い京野菜に、JB13XNMは活用できそう!
土寄せ後は、爪をロータからマックスロータに付け替え、うね間かん水用の浅い排水溝を掘りました。「えびいもは、乾燥に弱く水がないと十分に生育しません。今回は次の土寄せの時にトラクタがスムーズに走れるよう、浅めに10㎝程掘りました。トラクタに乗り、一連の作業ができることがメリットなので、JB13XNMで作業できるところは、しっかりカバーしたいですね」と片桐さん。土寄せの2週間後に、中耕除草をする予定です。
実証に取組む福田社長は、「私共も高齢化が進み、とても手作業では無理。栽培するには、機械化を進めたいです。1回目の土寄せは、90点以上!追肥もでき、かなりラクになります。今のところ生育も順調です」と満足されています。
育てたえびいもは、福知山市の学校給食に使われる予定。「今回の実証を通じて、食育活動も行っています。5月には近隣の小学生を招き、定植しました。こうした取組みがきっかけで将来、一人でも職業として農業に携わってくれたら良いなと思いますし、生産者の方にとっても、できるだけ楽しく農業をしてもらうことが、将来につながると思う」と黒川さん。
また、JB13XNMは、他の京野菜にも使えると言います。「この地域では管理機で、万願寺甘とう(トウガラシ)や、紫ずきん(黒大豆の枝豆)を栽培する方が多く、土寄せや中耕除草をJB13XNMですることで、年間を通じてこのトラクタ1台だけで作ることも可能だと思います。もっとラクして、単価の高い京野菜をたくさん作れば、所得確保にもつながりますし、私たちにとっても生産者を増やすことが、耕作放棄地の減少にもつながります」と乗用を前提とした機械化体系の確立に期待を膨らませます。片桐さんも、「機械化で生産者の皆様の課題解決を図っていきたい」と、えびいもの生産拡大を目指す挑戦に大きな注目が集まっています。