超幅狭小型トラクタ JB13XNM
京都府|
えびいも|
乗用を前提とした機械化一貫体系の確立で、京の伝統野菜「えびいも」の生産拡大、新たな担い手確保につなげようと、京都府福知山市で実証が行われました。実演の中心は、様々な作業が同時に行える超幅狭仕様の小型トラクタJB13XNMです。今回は2回目の土寄せから収穫まで、後半の取組みの様子をご紹介します。
京の伝統野菜、えびいもの栽培に一年中活用!
超幅狭仕様トラクタJB13XNMの実力とは?
パワーのあるトラクタだからこそ、
硬い土でも1回で揚げることができる!
実証は地域の中核を担う半田営農組合と、京都府中丹西農業改良普及センター、北陸近畿クボタ 福知山営業所が、地域ぐるみで2021年から行っています。(⇒前回の記事はこちらから)
2回目の土寄せは7月に実施しました。「えびのような曲がった形の芋を作るには、土寄せが非常に重要」と言うのは、実証の中心メンバーである京都府中丹西農業改良普及センターの黒川さん。親芋(親株)の横から出た子芋(子株)がえびいもになりますが、「親株と子株の間を離して土を入れないと、子株の形が悪くなり商品価値が下がります」。しかしながら、土寄せは暑い夏場に繰り返し行い、重い管理機を押しながら作業するため大きな負担です。「そこで実証では、作業の軽労化と良い形の芋をつくることを目的に、トラクタに乗ってアタッチメントも変えることでこの課題を解決することにしました」。
2回目の土寄せで使ったのは埋め戻しロータです。えびいもは茎が芋になるため、土の量が不十分だと良い芋にならず、「株元ギリギリまで爪が伸ばせ、しっかり株元まで土を寄せることで、生育に必要な土の量を確保しました」と話すのは、北陸近畿クボタ 福知山営業所の片桐さん。「うねが高くなる3回目以降の土寄せは、UN6501Xの純正爪軸にマックスロータ300の爪を取り付けて、土が揚がるように改良しました」。
実作業を確認した黒川さんは、「土が足りるか心配でしたが、馬力も自重もあることで爪がしっかり地面に食い込み、硬い土もほぐして想像よりも土が揚がった印象です。歩行型の管理機の場合、土が揚がりにくいと後から手作業で補う必要があります」。片桐さんも、「飛ぶ土の量に限界がある管理機に比べ、トラクタだと爪の回転数やエンジン回転数によって土の量が調整できるのがメリット」だと言います。
またその他、JB13XNMの利点に、左右のえびいもに対して、均等に土寄せが行えることがあります。「土寄せの回数が増えるごとに、うね間が狭くなり、トラクタが傾きます。揚げる土の量が左右で異なったり、まっすぐ飛ばなかったりするのですが、このトラクタにはモンロー機能(自動水平制御)が付いているので、トラクタが傾いてもロータリは常に水平に保たれ、精度の高い土寄せができます」
同時作業で、過酷な夏場の作業負担を軽くする
今回の実証では、土寄せと同時に肥料を土に混ぜ込みながら、うね間の除草を同時に実施。約6aの実証圃(540株を定植)で3つの作業をおおよそ1時間で終えました。「管理機だと、土寄せだけで大幅な時間が掛かると思います。しかも猛暑の中、機械を押して何往復も歩くので大変です。また、4回目の土寄せ時期は稲の刈取りと重なるので、作業時間の短縮や労力の軽減の面でトラクタに優位性があります」と片桐さん。実証メンバーの半田営農 福田社長も、「早く作業ができるし、とにかくラク。最高だ!」と言います。
収穫時にもJB13XNMが活躍。
1年中活用でき、費用対効果が大きい
収穫は、11月初旬に近隣の小学生を招いての食育活動を兼ねて行われました。「この半田地域だけでなく今年は全体的に空梅雨気味で、その影響かどうか孫芋(小さめなえびいも)が少ない印象です。また、4回目の土寄せ後に快晴が続き水が足りず若干生育が悪い部分もありますが、これぐらい獲れたら良いという水準は満たしたと思います。感覚的ですが、1コンテナ最低15㎏として45箱(約675㎏)収穫でき、結構獲れた印象です」と黒川さんは総評します。
また「生育途中、省力化を目的に親株を切らなかったために、通常より親芋が育ったのもあると思いますが、懸念していた、せみ規格(親芋にくっつき育ったため胴の部分が平たくなり、形が悪くなったえびいも)はいくらかあるものの、許容範囲かなと。土入れも大体できていますし、収量が多く良い形の芋が獲れていれば、多少せみ規格が出てもロスとしてカウントできると思います。省力化を図り、ザッと獲って出荷できるものは出す。きれいな芋ばかり狙おうとすれば、労力が凄く掛かりなかなか面積が広げられないと思います」。
掘り取ったえびいもは、JB13XNMに装着したトレーラーで運びました。「13馬力あるので走破性も良く、野菜コンテナを6箱載せることができ、省力化になります」と片桐さん。黒川さんも「重たいえびいもを、ほ場に出す作業が大変だから作らないと言う方がいるぐらいなので、これはラク。小回りが効くのも良いですね」と言います。
今回、額縁明きょの施工から収穫まで一連の作業をJB13XNM1台で行いました。「非常にラクをさせてもらいました。1台のトラクタで色んな仕事ができる。汎用性が高いのが良い」と福田社長は言います。手応えがあったことから来年は今年と同じ規模で栽培を続ける予定です。
「実証ではうね間を150㎝に設定しましたが、土が思った以上に揚がったので、もう少しゆとりを持たせて180㎝ぐらいのうね間にしたい」と話す黒川さん。加えて「えびいもと他の京野菜を組合せ、JB13XNM1台で1年を通して作業ができる機械化体系を作るのも面白いですね」と、JB13XNMを最大限に使い切る体系を模索したいと言います。片桐さんも「半田営農さん以外に来年、えびいもの作付けにJB13XNMを使いたいというお声を頂いています。また今夏、黒大豆の土寄せも実証しましたが、土の飛び具合も良くお客様から好評でした」と幅広い野菜に活用できそうだと言います。
子供たちへの食育活動で、未来の担い手を育てる
今年の実証では、年間を通して3回の食育活動を行いました。「子供たちに1人でも2人でもいいから、農業って面白いんだな!と分かってもらい、将来農業をするきっかけになれば、嬉しいですね」と顔をほころばせる福田社長。黒川さんも、「ワクワクする、こういう農業機械を小学生に見せて、農業も良いかなと思ってもらえればいいですね。別の仕事をするにも、休日はオペレータとしてこんな機械を動かしてみたいと、地域の担い手として農地を守ってくれる子供たちが増えれば」と期待します。
「農業に携わる人が減り、1人当たりの作付面積が増える中、機械化で省力化を図りながら規模拡大に対応することで地域農業に貢献していきたい」と話す片桐さん。今回の実証を原動力に、えびいもの生産拡大を含めた地域農業振興の挑戦は続きます。