
山口県岩国市で水稲18haを栽培し、先進的な農業を実践するのが合同会社source(ソース)です。合同会社sourceでは将来、急速に請負面積が増えることを見越し、春作業の省力化を目的に次世代型の直播栽培「RISOCARE®(リゾケア)」に取組んでいます。播種作業についても、作業負荷を減らしたいと導入したのが、アグリロボ田植機NW8SA-PF-Aです。田植機やドローンなどの選択肢がある中、なぜアグリロボ田植機NW8SA-PF-Aを選ばれたのか、その理由を代表代理の山崎 哲也さんにお聞きしました。
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担い手不足が顕在化。将来を見越し導入を早期に決断
山崎さんがNW8SAに興味を持ったのは、YouTube動画で実際に使用するユーザーのリアルな感想でした。「それまで『自動運転 イコール 真四角で田植えが簡単なほ場』という先入観がありましたが、変形田でも作業ができること、田植えから収穫まで一連の動画を見ても、人が作業するのと出来ばえが変わらないことから、これなら十分使えると思いました」。
しかし、離農者の田んぼを預かるケースが増えたとは言え、水稲の総面積は18ha。一見、オーバースペックのように感じられますが、山崎さんの経営戦略にNW8SAはマッチすると言います。「実はこの地域は高齢化による離農で10年後までに100ha規模のほ場が空くと予想されていて、弊社が受け皿となる話があります。それを見越して忙しい春作業の負荷を分散させようと始めたのが直播で、自動運転の田植機を使うことで、作業負荷がさらに減ると考えました。このやり方であれば1人で40haまで対応できると計算し、時期尚早かも知れませんが、早めに使いこなしたいと導入を決断しました」。
背景には次のような理由もありました。「周囲の農業従事者の平均年齢が70歳を超えています。そうした方たちが、急な病気やケガなどで農業が続けられなくなった時、すぐに対応できる環境を整えたい。そのためには余力を持っておくことが必要で、それを可能にするのが無人仕様のNW8SAでした」。

使用した種子「リゾケア®XL(エクセル)」。苗立ちを安定させる成分が配合されたコーティング済みの種モミ。2022年から栽培に取組む
アグリロボ田植機と直播との相性は抜群
山崎さんは2024年から、NW8SAを活用しています。「直播の場合、50a~60aのほ場であれば、種子の補給が必要なくノンストップで作業できます。あったとしても、肥料を追加するぐらい。1人でオペレーションでき、自動運転の間に水回りの確認や次の作業の準備ができます」。また、精度の高さを評価していて、「エラーが出てもモニタ上で不具合が確認でき、すぐ適切に対処できます」。農繁期でやるべき仕事が立て込む中、ダウンタイムが抑えられることはありがたいと言います。
NW8SAで播種する以前に、ドローンでの播種も試したそうですが、「ばら撒きなので田んぼに入らないことには稲か雑草かの判断がつきにくく、除草のタイミングに困りました。それが直播機で点播することで、点播した場所以外に生えたものは雑草だとすぐ分かるので、対策も遅れない。適期に作業ができます」と利点を挙げます。
また、山崎さんが導入の一番の決め手となったと話すのが「作業のロスがほとんどない」ことです。「無駄なく作業するためにはどのルートで播種するのが良いか、一番効率が上がる方法を考えていますが、今まで作業したことのないほ場であれば、どの場所から作業を始めてどのルートで走行するのがよいか分からないことがあります。アグリロボなら外周を1周まわれば最適な走行ルートを導き出してくれるので、頭を悩ます必要もありません。自分では思いもよらないルートを提案してくることがありますが、それが実は一番効率的に作業ができる走行ルートだったりします。アグリロボ田植機に任せていれば、効率が上がり無駄がない。これは非常にメリットを感じたところでした」。
>>変形田でのアグリロボ田植機(NW8SA)の植え付けの様子はこちら

NW8SAでの播種作業。リモコンであぜから自動運転の操作が行える

直播機「鉄まきちゃん」に除草剤散布機の「こまきちゃん」を装着。「播種」「施肥」「除草剤散布」の3つの作業を同時に行う
精密な施肥管理で生育のバラつきをなくす
山崎さんが使うNW8SAは、施肥量が精密にコントロールできます。「可変施肥仕様にしたのは、xarvio® FIELD MANAGER(以下、ザルビオ®フィールドマネージャー)と連携できると聞いたからです。ザルビオ®フィールドマネージャーを活用する方の話を聞くと、一見生育にバラつきがないように見えても実際には地力に差があるということでした。私の肌感覚でも収穫の際、同じ量の肥料を入れているはずなのに、ほ場によってモミの付き方が違うと感じていたことから、腑に落ちた部分がありましたね。ザルビオ®フィールドマネージャーを使えば、地力の差がデータ上で見える化でき、地力データに基づいた施肥管理ができるということで、可変施肥仕様に決めました」。
可変施肥仕様のNW8SAは、KSASに対応。ザルビオ®フィールドマネージャーの衛星データを元に作成した可変施肥マップをKSASにインポートすることで、精密な施肥管理が自動で行えます。「この地域は砂地が多く肥料が抜けやすい特性があり、生育のバラつきをなくすような施肥管理が課題です。可変施肥に対応したNW8SAを活用することで、何となく勘で施肥していたところを、適切な施肥を行うことで地力の均一化が望め、肥料のムダ撒きも抑えられると期待しています」。
>>ザルビオ®フィールドマネージャーとKSASの連携について詳しくはこちら

クボタでは2024年3月、衛星画像やAIを活用した栽培管理支援システム、ザルビオ®フィールドマネージャーと、KSASとの連携を開始
変形田でも問題なく播種できる。ほ場のマッピングと2回の肥料補給を含めて、40aのほ場を1時間余りで播種できた
儲かる農業の実践で地域を守りたい
NW8SAで作業をし終えた初年度を振り返って山崎さんは、「生育も良く、ドローンと違って株間が揃っている分、溝切りなどの水管理もラクでした。刈取りの際も条が見えるので、刈りやすかったですね。出来が良かったほ場では、一反あたり10俵ほど収穫できました。移植と遜色がなく、条件が良いほ場では直播の方が、少し収量が多いぐらい。結果が良かったので、来年は9割のほ場で直播をする計画をしています」と、NW8SAに満足しています。
農業を始める前、山崎さんは妻の智穂さんから励まされた一言が印象に残っていると話します。「それは『農業をするなら、儲かる農業をしよう』ということ。私自身は現状維持を考えていたので、意識が変わったのはそこからですね。儲かる農業を実現するためには、どのような方策を取れば良いのか、本気で考えるようになりました」。
現在、山崎さんが尽力しているのが、主力商品の祖生米(そうまい)の認知を上げることです。「ほ場がある地域は祖生地区と言って、昔からブランド米である祖生米を栽培する農業地区として発展しました。祖生米は岩国市内では長く売れているお米ですが、多くの方に食べて頂きたいと市内の飲食店などに卸し、祖生米の美味しさを知って欲しいと販路を広げる活動をしています。そのためにも祖生米がどういったお米であるか、食味などを数値化して見せることが大事」と言い、米の水分やタンパク含有率、収量を測定するコンバインも活用。データに裏付けされた管理を行うことで、品質を高めています。
先進的な農業経営に取組む山崎さんは、会社の経営基盤がもっと強くなれば、それに伴って規模も広がり、収益性も高まると言います。「儲かる農業を実践し続けることで、持続的な農業が可能になり『儲かるから、皆でやろう!』と声掛けができる。雇用が安定すれば地元で就職しようと、働き手が増えることにもなる。それが引いては地域全体の活性化にもつながると思っています。日本の農業は不透明な部分が多いですが、逆にチャンスだと前向きに捉えることが大事」と、山崎さんの挑戦は続きます。

NW8SAで播種したほ場。山崎さんは、移植と遜色ない出来ばえに満足している