ソリューションレポート
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2022年5月26日に、島根県津和野町で「礫質ほ場における効果的な排水対策機械実演会」が、島根県農業技術センターの主催で行われ、石礫の多いほ場でも施工できる全層心土破砕機「カットブレーカーmini」による排水対策が紹介されました。
全層心土破砕機カットブレーカーmini CKBS-04
石礫があっても施工可能な「カットブレーカーmini」の実演会を開催
島根県農業技術センタ-は、令和4年度全国農業システム化研究会の現地実証調査として、礫質ほ場における効果的な排水対策の実証を行っています。その実証調査の一環として、同センターは、津和野町の実証ほ場で、「礫質ほ場における効果的な排水対策機械実演会」を開催。石礫があっても施工可能な「カットブレーカーmini」による全層心土破砕の実演を行いました。実演会には、地域の生産者や関係機関等、多くの来場者が参加。限られた時間の中、水田園芸を推進する各地の普及関係者が熱心に機械を確認する姿が印象的でした。実証試験は、排水対策後、その改善効果を調査するとともに、6月に緑肥のすき込みを行い、緑肥の輪作が土壌の理化学性と作物の生育に及ぼす影響を調査します。
実証担当者の声
カットブレーカーによる排水改善効果を実証し、
排水対策の重要性を発信したい
島根県では、「水田を活用した園芸作物の生産(水田園芸)」を重点推進事項に位置付け、県西部地域では、主にキャベツ・ブロッコリーの生産を推進しています。しかしながら、この地域は、礫が分布するほ場が多く、排水対策が十分に行えず、長雨による排水不良や大雨による冠水等が原因で、減収になることがあります。例えばサブソイラでは土が硬すぎて施工できず、プラソイラだと土中から礫が持ち上がってしまうというように、排水対策に適した機械が少ないのが問題でした。そこで今回、石の多いほ場でも作業できる「カットブレーカーmini」を使用し、排水改善効果を実証することになりました。また、併せて、緑肥が作物の生育に及ぼす影響も調査します。
試験区は、実証区として、カットブレーカー区、緑肥区、緑肥+カットブレーカー区を設定しました。慣行区のサブソイラ区、無処理区を比較し、それぞれに土壌水分センサを取り付けて、土壌水分の変化を調査します。この実証を通じて、みなさまに排水効果をお見せして、排水対策の重要性をご理解いただきたいと思います。
実証経営者の声
排水対策を見直すことで増収を図り、
付加価値のあるブロッコリー産地を目指す
ブロッコリーの収量の落ち込みを排水対策で解消へ
米の価格が下がり、水稲だけでは先が見通せなくなったこともあり、徐々に露地野菜にシフトしてきました。島根県が推奨している水田園芸6品目※のうち、去年から本格的にブロッコリーに取り組んでいます。この地区は、500mの高冷地ですので、他の地域が出せない秋の早い時期に収穫をして、高値の時期に出せるという特色のある品目に育てられると考えて、ブロッコリーを選択しました。ところが、昨年の大雨ですべて水に浸かってしまうなど、ほ場自体の排水が良くないことが、収量が落ちる原因だと分ってきました。排水対策をしっかりやろうと、県の方からお声がけいただいて実証ほ場として参画することになりました。
※島根県推進6品目:キャベツ、たまねぎ、ブロッコリー、白ねぎ、アスパラガス、ミニトマト
カットブレーカーの排水効果に期待
ほ場に暗きょは入っていますが、ほ場整備から30年経っているので、果たして機能しているかどうか分かりません。排水対策は、最初はミニショベルを使って額縁明きょだけ行っていましたが、3年前からは、息子が購入したプラソイラを借りて、約90㎝幅で施工しています。その効果で、排水が良くなり、ほ場が乾くようになったので、続けていくと効果があるのかなと思っています。今回の実証で、カットブレーカーを見ましたが、プラソイラやサブソイラより、作業速度が速いですね。面積をこなすには良い機械だと思います。これからほ場の状態がどのように変化するか期待しながら見ていきたいと思います。
排水対策を重視し、水田転換畑で取り組む加工・業務用キャベツ
排水対策を実施すれば作りやすいキャベツ
この地区は高齢化が進んでいて、今後、面積が増えてくることは確実なので、規模拡大を想定して、キャベツを中心に栽培しています。キャベツは、県で推奨されている品目で、普及センターの指導も受けながら取り組んでいけます。栽培してみると、意外と水田転作1年目で作りやすい作物でした。きちんと排水対策を行えば、県の指針通りの収量が取れます。今、経営面積が5haと、この辺りでは大きい面積になってきたので、ここの集落だけで経営を考えるのではなく、他の地区の農家さんと連携することで、加工用キャベツに取り組み、販路を拡大しています。
カットブレーカーとプラソイラの排水効果を比較したい
プラソイラは、破砕する効果が高いことと、下の土を上げてくれるので部分的に天地返しを行ったことになるのが良くて導入しました。それとプラソイラだったら石が上がって来るよと言われたので逆に買ったんですよ。石を上げてほ場から出すことで、ロータリ耕をもっと深くかけられるようになってくるので。カットブレーカーは、作業的にはかなり速くなるのかなと思いました。時間が経たないとわからないんですけど、土を持ち上げて下に空洞ができるので、排水効果は高いように思いました。これから実際に雨が降ってどれくらい排水が良くなるのか、プラソイラと比べて、どの程度違うのか、また、メーカーによる説明では、簡易的な暗きょが1年先でも残ると聞いたので、その辺を確認したいですね。
実証技術開発者に聞く
礫質ほ場の多い中山間地域に対応!
V字刃で幅広く心土破砕を行うカットブレーカー
従来の心土破砕機は、直刃のため石が持ち上がってしまい、島根県の中山間地に多く見られる石の多いほ場には適さないという欠点がありました。それが、この地域の排水改善が進まなかった理由のひとつでもあり、中山間地に適した心土破砕機の開発が急がれていました。そこで㈱北海コーキと農研機構の共同研究で発案されたのが、今回使用するV字刃のカットブレーカーです。V字刃に土を抱え込みその土の重さで深く刃を挿入させながら幅広く心土破砕できることが一つ目の特長。斜めに刃がついているので、石に当たっても刃が逃げて石が持ち上がらないことが2つ目の特長です。V字刃で土を持ち上げながら破砕すると、耕うんしたように土が細かく砕かれ、それがもとの固い状態に戻るのに2~3年かかることが調査でわかっています。島根県で実演させていただくのは初めてですので、この機械をどういうふうに畑作に活用していくか、地域のみなさんとアイデアを出し合いながら進めていきたいと思います。