「礫質ほ場における効果的な排水対策の実証」現地検討会 心土破砕+緑肥効果でブロッコリーの生育促進を確認 お気に入りに追加
令和4年度 全国農業システム化研究会現地実証調査
お気に入りに追加

ソリューションレポート

島根県|

ブロッコリー|

「礫質ほ場における効果的な排水対策の実証」現地検討会 心土破砕+緑肥効果でブロッコリーの生育促進を確認

「礫質ほ場における効果的な排水対策の実証」現地検討会 心土破砕+緑肥効果でブロッコリーの生育促進を確認

令和4年度全国農業システム化研究会の現地実証調査として、島根県農業技術センタ-が取り組んでいる「礫質ほ場における効果的な排水対策の実証」。同センターは、2022年9月28日、実証ほ場のブロッコリーが収穫期を迎えたことから、今年度の調査結果を考察する現地検討会を開催しました。

 


 

実証調査の結果報告と次年度に向けた対策を意見交換

 現地検討会に参加した関係者の皆さまは、午前中に、津和野町のブロッコリーほ場を視察し、生産者の永田寿秋様と状況を確認。午後から、益田合同庁舎に場所を移して、実証調査の結果報告と次年度に向けた対策等について意見交換を行いました。
 今回の実証は、①額縁明きょとカットブレーカーによる排水性の向上、②緑肥鋤き込み効果が2大テーマでしたが、9月16日(播種後79日)に収量調査を行った結果、①の排水対策については、収穫時の地上部生育は、カットブレーカー区およびサブソイラ区が、明きょのみ区より優れていたこと、②の緑肥の有無による影響については、緑肥有区の方が地上部生育が良く、生理障害(ホウ素欠乏による茎表面の「かさぶた化」等)の発生も、緑肥無区より有区の方が少なかったことが確認され、検討会で関係者に報告されました。

画像を拡大

関係機関の声

緑肥を作付け、排水対策に明きょと心土破砕を施工した区が多収となりました

試供機(カットブレーカー、フレールモア)の特徴と作業効率を訴求

 今回の排水対策の実証区では、カットブレーカーと振動サブソイラを同時に施工し、作業速度の違いを実演しました。両機種とも、深度40㎝、暗きょと直行するように3m間隔で施工。作業速度は、振動サブソイラの0.25㎞/hに対して、カットブレーカーは0.80㎞/hと速く、また、礫のあるほ場でも効率よく心土破砕ができることを生産者の方や関係者に見ていただくことができました。また、緑肥の細断では、フレールモアによるライムギ、ヘアリーベッチ緑肥の細断を実演。直進作業速度は1.8~2.0㎞/h、10a当たり0.5hの作業が可能で、生産者にフレールモアの作業の速さ、仕上りの良さを見ていただくことができました。

画像を拡大

明きょ+心土破砕区、緑肥有区の地上部全重が大きく生長

 9月16日(播種後79日)に行った収量調査では、前作に緑肥ヘアリーベッチを作付け、排水対策に明きょと心土破砕(カットブレーカーもしくは振動サブソイラ)を施工した場合、多収となることが確認できました。心土破砕を行った区の方が、地上部全重(収穫時の茎葉部の出来具合)が、明きょだけの区に比べて大きくなっていたので、そういう点では、排水対策の効果は出ているだろうと考えています。
 この結果は、土壌水分センサーの値とリンクしています。緑肥による影響については、緑肥有区の方が、地上部全重は数字の上でも大きくできていました。9月に入り、全試験区で、生理障害が発生しましたが、緑肥無区より、緑肥有区の方が発生程度は低く、例えば、心土破砕した区のホウ素欠乏症状は、緑肥無区が65~75%に対し、緑肥有区は10~20%と少なくなっていました。今後、検証を重ねて、緑肥効果であるかどうか調査したいと思います。

画像を拡大

画像を拡大

お客様の声

排水対策確実に向上していることを実感した実証でした

心土破砕で改善されたほ場。あとは総合的な対処が必要

 今まで、このほ場で色々作ってきて、去年はサトイモを作りましたが、雨が降ると翌日、水口周辺にはすごく水がたまって入れない状態が続いていました。今回の実証では、それが明らかに改善されていました。ホウ素欠乏症状や軟腐病が発生し、作物は完璧には出来なかったですけど、排水対策としては、確実に向上していることが実感できました。表面排水という面だけで考えると効果は高かったと思います。排水対策は、総合的に対処しないと効果は出ません。暗きょがきちんと効いているのか、明きょが常に管理されているのか、それらがすべてマッチしてこそ、最大の効果をカットブレーカーも発揮するのだろうと思うので、そのあたりを普及員の皆様と検討して、次年度の対策を立てていきたいと思います。

見るからに違ったヘアリーベッチほ場の色

 緑肥に関しては、ライムギを緑肥としたほ場では、あまり効果は感じられなかったのですが、ヘアリーベッチを鋤き込んだほ場では、8月の後半くらいまでの生育が旺盛な時期には、緑肥有区と、緑肥無区では、見るからに色合いから違うなと感じていました。
 技術センターが調査した結果を確認したところ、数値的にも生育の差が出ていて、ヘアリーベッチの緑肥効果が生育に好影響を与えていたみたいです。今回、緑肥の細断時に使用されたフレールモアは、作業性が非常に良かったので、今後のことも考えて購入しました。

画像を拡大

お客様の声

計画的な作業が可能なカットブレーカーと振動サブソイラ

表面排水と地下排水の組合せが重要

 今回の排水対策の実証で使用されたカットブレーカーと振動サブソイラを比べると、さほど差は感じませんでした。ただ、雨が降った後、明きょの水の引きは、どちらも明らかに早かったので、バランスよく排水効果を得るためには、表面排水とカットブレーカーや振動サブソイラなどによる地下排水を両方施工すべきだとあらためて感じました。
 カットブレーカーや振動サブソイラは、どちらとも作業効率が良いと思います。現在使用しているプラソイラは、礫があると引っ掛かって止まってしまうので、一回下がってやり直したり、車速を落としたりしないといけないので、予定より作業時間がかかることが多いです。その点、例えばカットブレーカーは、礫を避けて同じ作業速度で進んでいくし、通常10aで40分かかるとすれば、20aだから80分で出来るとか、作業計画は立てやすいと思います。しかも高いクオリティで仕上げてくれます。

窒素固定と雑草対策の両面から緑肥施用に取り組む

 緑肥に関しては、肥料も高騰していますし、土壌団粒を作るというだけでなく、窒素固定というか、肥料を土壌に残すという意味でも、今後やっていかないといけないと思っています。また、今、キャベツの前作に、緑肥としてエンバクを春先に播いて、6 月に鋤き込んでいますが、この時期は1 年の中でいちばん雑草が生えてくるので、緑肥で雑草を抑え込んでいくと、秋にキャベツが作りやすくなります。緑肥の種類については、エンバクだけでいいのか、もっと量が穫れるソルゴーを入れた方がいいのか、ヘアリーベッチなどでもっと窒素固定を気にした方がいいのか、作物やほ場が違ってくれば条件が変わるので、色々検討しながら、土づくりと雑草対策の両面から、緑肥に取り組んでいきたいと思います。

画像を拡大

ワンポイントアドバイス

ブロッコリー栽培における排水対策と緑肥利用の組み合わせ技術として実証が
行われており、貴重で示唆の多い成果が得られています

1.中山間ほ場の大きな礫の多い条件での排水対策技術の貴重な事例

 島根県の中山間ほ場では、作土層の下の比較的浅い位置に大きな礫が存在する場合があり、心土破砕などの排水対策を行う際の障害となっていました。今回、システム化実証調査として、島根県で初めて導入試験された心土破砕機「カットブレーカー」は、V字刃が石に当たっても刃が逃げて石が持ち上がらない特長を持ち、施工深さを40cmと浅めに調整することで効果的な施工が実証できました。このことは、全国の中山間地域にも多く見られる礫質ほ場における排水対策技術の貴重な事例となりました。本実証調査のカットブレーカー実演には、本機を共同で開発された(株)北海コーキ(後藤幸輝様)と農研機構(北川巌様)の参加をいただき、北川様から直接カットブレーカーの機能の解説と施工方法の指導を受けたことは、参加者にとって得難い体験となりました。

画像を拡大

2.ブロッコリー栽培における緑肥利用技術として様々の示唆がありました

 今回の実証調査では、排水対策施工(溝掘機、弾丸サブソイラ、カットブレーカー)の処理と合わせて、緑肥栽培の有無の処理が実施されました。緑肥作物では、マメ科のヘアリーベッチとイネ科のライムギが比較されました。ヘアリーベッチは生物的な窒素固定による地力向上を、ライムギは主に豊富な有機物の供給を狙いにしていました。このように、「排水対策施工×緑肥栽培」という組み合わせ処理により設計された実証調査となり、興味深く意義深い内容です。9月28日の現地検討会では、成績はまだ途中段階でしたが、今後来年2月の成果発表会にむけて、考察を深める事項や、土壌分析などのデータを集積する方向性など、熱心な議論がありました。また、今後のブロッコリー栽培における緑肥利用技術の普及や新しい研究素材にもつながる様々の示唆もありました。現象を一つ一つ検証していくことにより、緑肥利用技術が発展していくことを期待しています。

画像を拡大

詳細(PDF)のダウンロードはこちら


▶カットブレーカー作業の記事はこちら
▶フレールモア作業の記事はこちら
▶お問い合わせはお近くのクボタのお店まで

この記事をシェア

よく一緒にみられている情報