緑肥の肥効とうね内2条施肥による収量向上効果を実証 お気に入りに追加
令和6年度全国農業システム化研究会現地実証調査 加工・業務用キャベツ機械化実演会~うね内2条施肥~
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8月6日、島根県津和野町で、令和6年度の全国農業システム化研究会の現地実証調査の一環として、加工・業務用キャベツ機械化実演会(うね内2条施肥)が行われました。今年度の実証は、マメ科緑肥「ヘアリーベッチ」の肥効とうね内2条施肥による施肥の効率化により、キャベツの単収が向上し、収益性が向上することを実証します。実演会当日は、県の普及関係者と近隣のキャベツ農家が集まる中、「超砕土成形ロータリ」に「畦内2条施肥機」を組み合わせたトラクタによる、うね立て同時うね内2条施肥を実演。収益向上と減肥によるコスト削減につながる機械化提案に熱い視線が注がれました。

目次

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実証担当者の声

島根県農業技術センター
水田園芸技術普及課
主任農業普及員
佐々木 真一郎 様

緑肥の活用とうね内2条施肥で、
加工・業務用キャベツの安定生産技術を実証

島根県は、水稲を中心とした経営を行う集落営農法人が多いという特長がありますが、米価の下落により、利益が確保しにくくなっています。そこで、本県では、水田での園芸品目生産によって、収益を確保する「水田園芸」の取組みを進めており、津和野町では、加工・業務用キャベツの生産を推進しています。加工・業務用キャベツにおいては、資材価格が高止まりしていることや、昨今の天候不順により、肥効が安定しないことなどから、施肥の効率化や単収を向上させる技術の導入が求められています。また、当地域のような中山間地域では、高齢化により労働力が低下していることや、機械操作ができる人材が限られるため、省力化・省人化のための機械化体系の確立も課題となっています。そこで今回の実証では、うね立て同時うね内2条施肥による施肥の効率化に加え、一昨年度から実証に取り組んでいるヘアリーベッチによる土壌理化学性改良効果により、効率的な施肥、単収向上が可能であることを検証します。

8月6日に島根県津和野町で開催された加工・業務用キャベツ機械化実演会(うね内2条施肥)

令和6年度全国農業システム化研究会現地実証調査 概要
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試験区の設定

試験区 概要
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実証区のうね立ては超砕土成形ロータリを使用

水田を活用した畑でのうね立ては、砕土が悪いと苗の活着や除草剤の効きに影響が出ることがあります。そこで砕土性の向上が期待でき、うね内2条施肥のオプションがある超砕土成形ロータリに着目し実証区に使用しました。また、実証区では、自動操舵システムを装着したトラクタを使用しています。中山間地では、真四角ではないほ場も多いので、うね立てが難しく、うねが曲がることで本数が減ってしまいます。自動操舵システムを使えば、うねが真っすぐに揃うので、計画通りのうねが立ち、ほ場の利用効率も上がると思います。水田園芸による収益確保は、積極的に新しい技術を導入することで、目的を達成できると考えています。今回のような実証を積み重ねることで、農家の皆様の課題を解決し収益向上につなげていきたいと思います。

超砕土成形ロータリRT-416K(クボタ)+畦内2条施肥機RT-400-2S(鋤柄農機)によるうね
内2条施肥

超砕土成形ロータリで成形されたうね。自動操舵システムを使用すれば経験の浅いオペレータでも真っすぐなうねが立てられる

畦内2条施肥機(鋤柄農機)の施肥パイプ

うね上面から12~13㎝の深さに施用

生産者の声

島根県鹿足郡津和野町
農事組合法人もとごう
代表理事 林 靖登 様
栽培面積:22.6ha
水稲:21.7ha(主食用米9.8ha、もち米 3.1ha、
       WCS用稲 4.9ha、飼料用米3.9ha) 
露地野菜: 加工用キャベツ 0.9ha
出 荷 先: JA、個人販売、地場市場

次世代に農地を残すため加工・業務用キャベツに取り組む

津和野町では最大規模の水田地帯である木部地区で、水稲を中心とした集落営農組織を経営しています。当法人は、農業者の高齢化を背景に、「次世代に農地を残す」をモットーとして、効率的な農地の維持を目的に設立しました。この地域は、標高200mを超える中山間地域で、令和元年度から農業競争力強化農地整備事業を活用し、大区画化のためのほ場整備を開始、令和6年度に完了する計画となっています。この事業が高収益園芸作物を栽培することで優先的に採択されることと、米価の下落もあって収益力を高めるために、3年前から加工・業務用キャベツに取り組んでいます。しかしながら、単収向上に苦労しており、しかもキャベツは水稲作より労力がかかります。単収向上や省力化のための機械化体系を模索していたところ、今回の実証について普及員からの勧めがあり参画しました。

地域のキャベツ農家が導入している機械を慣行区体系として設定。成形機(だい地くん)は県が貸し出し、林代表が自ら作業を行った

機械化実演会を近隣の生産者と一緒に見る 林代表

減肥が可能なうね内局所施肥技術に期待

今回、超砕土成形ロータリとうね内局所施肥の実演を見ましたが、肥料や燃料代が上がる ね立て+うね内局所施肥の実演中、肥料が少なくて済むというのはありがたいですね。この地域では、堆肥も安い鶏ふんを使っています。キャベツは高収益とは言われますが、現時点では苗代など資材代も高く、収益を上げるためには、収量をこの実証が目標としている7t/10aまで増やし、生産コストを下げることが必要です。キャベツを今後、拡大していこうと決めて、新たに乗用半自動野菜移植機 KP-202も導入しました。「次世代に農地を残す」ため、若い人が参入できる機械化をこれからも進めていければと思います。

メーカーの声

愛知県岡崎市
鋤柄農機株式会社
代表取締役社長
鋤柄 忠良 様

3割減肥の効果が期待できる畦内2条施肥機

近年、肥料が非常に高くなっており、少しでも肥料を減らしてコストを下げたいというお客様の要望に応え、当社では畦内2条施肥機を開発しました。この施肥機は、うねの中、約10~15㎝の深さに筋状に肥料を施用し、根の近くに集中的に落とすことができます。これにより、作物が生長したときに、肥料を効率的に吸収でき、減肥が図れます。うね内の局所に施用をすることで、今までの報告では、2割から3割の減肥が可能だと聞いています。また、うねの表面に肥料が少ない、あるいは出てこないということで、雑草の抑制にも効果があると言われています。

初期生育の改善に有効な表層混和施肥装置

うね内局所施肥の留意点としては、作物を植えた直後の肥料不足が考えられます。当然、根の活着にも影響しますので、そこを何とか補いたいということで、表層混和施肥装置を付け加えました。うねを作った後、上面に溝を作って、そこへ少量の肥料を落とし、そのあと転車輪で攪拌する機構です。苗近くの表層に施用することによって、初期生育の改善が期待されます。私達は機械メーカーですので、農家サイドで良かった、悪かったという声は聞けますが、どうしても感覚的な内容になってしまいます。今回のように、公的機関の実証によって、数字的なデータが取れるということは、とても有難いことだと思っております。

畦内2条施肥機RT-400-2Sに装着された表層混和施肥装置(表層混和施肥装置は現在開発中の試作機)

クボタの解説

株式会社クボタ
担い手戦略推進室
技術顧問
安達 克樹

超砕土成形ロータリと畦内2条施肥機の組み合わせに着目した島根県の実証

島根県農業技術センター水田園芸技術普及課では、砕断力が強く土壌砕土性の向上が期待できる超砕土成形ロータリ(RT-416K)と畦内2条施肥機(RT-400-2S)の組み合わせに着目され、2024年8月6日には津和野町の実証ほ場で加工・業務用キャベツのうね立て+うね内局所施肥の実演が行われました。この実証調査では、加工・業務用キャベツの前作にマメ科の緑肥作物ヘアリーベッチが導入され、6月27日に緑肥の地上部はフレールモアで細断され、地表で乾燥された後、7月20日に地上部細断物と根株は標準ロータリで作土層へすき込まれました。その後8月6日に超砕土成形ロータリにより緑肥の残渣物を細かく砕断しながら、土壌の砕土性も向上させることにより、うね内局所施肥装置の作動の安定化にも寄与することが期待されていました。加えて、本実証調査では、鋤柄農機株式会社にて現在開発中の表層混和施肥装置を付加することによる新しい「うね内局所+表層混和」施肥技術の栽培試験も推進されています。国が策定した「みどり戦略」により、化学肥料の使用量低減の施策が強く進められている中、本実証調査のうね内局所施肥技術、さらにはうね内局所+表層混和施肥技術の実証調査は有意義な試みと言えます。緑肥の活用とうね内局所施肥によるキャベツの収量向上効果を検証することは、「みどり戦略」を複合技術で推進する形であり、大いに期待されます。

津和野町の実証ほ場で行われたキャベツのうね立て+うね内局所施肥の実演

稲株・麦わらごと土を細かく砕いて耕起から一気にうね成形まで

クボタ超砕土成形ロータリ RTシリーズ
RT-414K RT-415K RT-416K RT-417K RT-418K

●砕土爪軸、増速スプロケットで砕土性向上
クボタ純正ロータリより爪本数の多い砕土爪軸を標準装備。 増速スプロケットにより爪軸回転数もアップさせることで、 稲株・麦わら等を十分に粉砕、耕起すると同時にうね成形ができ、稲作・麦作後の野菜移植床づくりが一工程で行えます。

●マッドレスゴム標準装備
ロータリカバーの内側に、土の付着を防ぎ、馬力ロスを軽減するマッドレスゴムを装着し標準装備しました。
これにより、耕うん爪の摩耗を低減するとともに、燃費の向上も期待できます。

●スキッド(サイド成形板付)オプション
オプションのスキッドを装着すれば、うね間を平滑に仕上げることができるので、移植・管理作業がしやすくなります。さらに、スキッド付属のサイド成形板により、既設のうねの側面を均しながらうね成形が行えるため、きれいで崩れにくいうねに仕上がります。

●キャスタスタンド標準装備
着脱、移動、保管時に便利なキャスタスタンドを標準装備しました。オプションのマルチ装置、上面マルチキットを装着した状態でもバランスを維持します。

クボタ純正ロータリより爪本数の多い砕土爪軸を標準装備

オプションのスキッドを装着すれば、うね間を平滑に仕上げることができる

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