9月12日、島根県津和野町で、県が推進する水田園芸における管理作業の省力化を目的に、乗用管理機を活用した「加工・業務用キャベツ機械化実演会」が行われました。今回の実演会は、午前の部は、ナビライダーによる中耕除草と追肥の同時作業、午後の部では、ナビライダーのアッタチメントをブームスプレーヤに取り替え、KV2200-BSとともに防除作業を実演。作業の省力化・効率化とともに、複数作業の切り替え、公道移動が可能など、乗用管理機の機動性の良さが実感できる実演となりました。
実演会・午前の部
ナビライダーによる中耕除草・追肥作業
島根県農業技術センター主催で開催された加工・業務用キャベツ機械化実演会。午前の部は、ナビライダーNR17による中耕除草・追肥作業の実演が行われた
ナビライダーで中耕除草の作業時間を大幅に短縮!
実演会午前の部は、地域の生産者や県およびJAの普及関係者が参加し、トラクタベースの基本性能の高さが特長のクボタ乗用管理機ナビライダー NR17による中耕除草・追肥の同時作業が行われました。ナビライダーは、前後バランスや操作性・居住性に優れており、4つの操舵モードを選択できます。小旋回が可能な足回りの良さが、中山間の小面積ほ場では、とりわけ有効な機械です。アタッチメントは、中耕除草にキュウホーのS4カルチ(2条)、追肥にジョーニシのサンソワー等が紹介されました。実演会を主催した島根県農業技術センターの佐々木主任は、「この地域では、高齢化やオペレータ不足により、労働力が減少しています。また、集落営農法人の場合、水稲が経営上大きなウェイトを占めており、作業の競合によりキャベツの作業に手をかけることができないとの声も聞かれます。そこで、中耕除草や追肥、防除などの効率化を図るため、乗用管理機の実演会を計画しました」と開催の目的を説明します。島根県では、キャベツの中耕作業を歩行型管理機で行うことが多く、10a当たり2時間近くかかることもあり、身体的な負担軽減が課題となっています。乗用型機械を使用すれば、同じ面積を30分程度で作業することができ、今回の実演のように同時に追肥も行えば、大幅な労力軽減につながると、県は大きな期待を寄せています。
実演会の主旨を説明する島根県農業技術センターの佐々木真一郎主任
使用機械とアタッチメント
クボタ乗用管理機ナビライダーNR177(NR23の選択も可能です)
除草効果が高く、低コストなナビライダーによる中耕除草
島根県鹿足郡津和野町
農事組合法人もとごう
代表理事 林 靖登 様
栽培面積:水稲:21.7ha、キャベツ 0.9ha
除草や追肥は、特に省力化を図りたい作業です。これまで、除草作業の省力化のために生分解性マルチや除草剤を使用してきました。生分解性マルチは、雑草をしっかり抑えられ、収穫後はそのまますき込みが可能で、省力化できますが、コストがかかります。土壌処理型の除草剤は、土壌水分や散布タイミングによっては効きが安定しないことがありました。今回実演されたナビライダーにS4カルチや培土器を組み合わせた中耕作業は、除草効果も高く、けん引式でコストを抑えることができますね。私たちもキャベツの収量や品質を向上させるために、どのような技術や機械を導入すればよいのか模索中です。実証を通じて色々と学んでいきたいと思います。
実演会・午前の部
2種類の乗用管理機(ナビライダーNR17・KV2200-BS)による防除作業
午後の部では、ナビライダーNR17 とKV2200-BSの2種類の乗用管理機による防除作業の実演が行われた
多目的に使用できる機動性の良さが魅力な乗用管理機
午後の部では、ナビライダーNR17 とKV2200-BSの2種類の乗用管理機による防除作業が行われました。午前の部で、S4カルチを装着して作業を行ったナビライダーは、後部のアタッチメントを丸山製作所のブームスプレーヤBSM201に付け替えて防除作業を実演。ナビライダーやKV2200-BSは、標準3点リンク機構を装備し(KV2200-BSでは、ブームスプレーヤを取り外してから3点リンク部品を装備します)、対応作業機を簡単に取り付け、取り外しすることが可能です。乗用管理機は、作業機を付け替えることにより、多目的に使用できるという機動性の良さが大きな魅力です。
KV2200-BSの防除作業における最大の特長は、600Lの大容量タンクの装備による防除作業の高能率化です。散布幅は10.2mと広いため、ナビライダー+BSM201の散布幅4.2mと比較すると2倍以上の散布幅であり、大幅に作業効率は高くなります。また、タンク容量がBSM201の3倍(600L)のため、大規模ほ場への農薬散布においては、タンクへの薬液補充回数が少なくなることが大きな有利点です。薬剤散布時の作業速度については、KV2200-BSが1.5km/hであり、ナビライダー+BSM201の方は2.0~2.1 km/hとのことでした。ナビライダー+BSM201の作業速度が若干速いようです。
平場の大区画ほ場を枚数多く持つ大規模経営体においては、大容量タンクを持つ大型のブームスプレーヤが防除作業において有効となります。他方では、中山間地ほ場のように、20a~30a程度の比較的狭いほ場を多く持つ中・小規模経営体においては、機械購入コストとその減価償却や、機械作業の取回しの良さ、取付け・取り外しの簡便さなどを総合的に評価することで、中耕除草・追肥作業と防除作業をナビライダーを軸に多目的に乗用機械化する方策も有力な選択肢と考えられます。
使用機械とアタッチメント
クボタ乗用管理機ナビライダーNR177
(NR23の選択も可能です)
ブームスプレーヤ BSM201 [丸山製作所]
●噴霧用ポンプ搭載。除草に加え高圧での殺虫、殺菌・消毒作業が可能です。
●4輪キャスタ付きスタンドを標準装備。トラクタへの取付けが簡単に行えます。
※散布高さは400~1500㎜の間で調整可能
クボタ乗用管理機KV2200-BS
(ブームスプレーヤ搭載仕様)
KV2200-BSの特長
●ワイドトレッド&ハイクリアランスが特長で、トレッドは1200㎜と1470㎜(W仕様)が選択可能。左右のタイヤを反転させると、さらに310㎜広げることができます。最低地上高は770㎜を確保し、作物のうねをまたいでの作業が余裕を持って行えます。
●ブームスプレーヤを標準搭載したBS仕様は、600Lのタンク容量を持ち、散布幅は10.2m、散布高は580~1360㎜。噴霧ポンプの吸水量は68L/分と大容量。力強い噴霧が得られます。
防除作業は今、いちばんの課題。
乗用管理機の特長がよく理解できた実演会でした
島根県鹿足郡津和野町
永田 恭一 様
栽培面積:キャベツ90a、たまねぎ1.3ha、にんじん50a他
今、防除がいちばんの課題です。猛暑の影響で雑草や害虫の被害が増えていて、薬剤散布の回数も増やさないといけない状況です。キャベツは定植した後、除草剤を1回散布し、その後に10日おきに殺菌殺虫剤を7~8回散布しています。防除作業は、うねをまたぐエンジン付き収穫台車に動噴を乗せて、移動しながら行っています。背負い動噴よりは楽です。今回、乗用管理機による防除作業を見学させていただきましたが、うちのように水田を利用した野菜作の場合、排水対策でほ場に弾丸暗きょをかけているので、ナビライダー+BSM201は、ブームが短く、振動が少ないので散布作業が安定し、操作がしやすいと感じました。一方、KV2200-BSは、タンクが600Lと大きく、しかも7~8列のうねを一度に散布できるので、面積を効率よくこなせるのがメリットですね。ノズルから噴霧した薬剤は、KV2200-BSの方が、散布した際の霧が柔らかくて、作物を優しく包み込むような感じで作物が傷まないように思えました。
実演会のおかげで、それぞれの乗用管理機の特長が良く理解できました。どちらの乗用管理機がうちの経営にマッチしているかと考えた場合、4aや5aほどの小区画ほ場もあるので、ナビライダー の方がいいですね。
機械の乗用化による省力化は、時代の流れだと思います。この地域では、専業で野菜作に取り組んでいる農家は多くありません。自分がしっかりと加工・業務用キャベツを栽培して、儲かるモデルケースになれば、取り組む人も増えると考えています。
加工・業務用キャベツに取り組む近隣の生産者と普及関係者が実演会に参加
メーカーの声
株式会社丸山製作所
国内営業本部 特販部特販課
佐藤 雄三 様
小型トラクタに搭載できる200Lブームスプレーヤ BSM201
BSM201は、小型トラクタに装着できるタンク容量200Lのブームスプレーヤです。機体両側に腕を伸ばしている為、左右の重量バランスも良く、安定して作業ができます。今回は、クボタ乗用管理機ナビライダー NR17に装着しました。シンプル設計で、小型トラクタに搭載が可能で、乗用で散布作業が行える事が一番の特長です。また、軽量なので踏圧も低く土壌を荒らすことはありません。
BSM201 は 、全幅が1050㎜と狭く、狭いうね間でも作物への接触を最小限に抑えるスリムな形状で、散布幅が4.2m、高さの調節も1.5mまでの微調整が可能です。水平散布はもとより、サトウキビの防除などブームを立てた立体散布も出来ます。また、4輪キャスター付きスタンドを標準装備しており、スタンドは 高さが 調節できるので、トラクタへの取付けが簡単にでき、搭載性に優れています。
ナビライダーNR17 インプルメント脱着時間計測(単位 分:秒)
★実演会時 クボタ調べ(9月12日)