サトウキビ収穫作業の課題解決へKSASシンプルコネクトの実証 お気に入りに追加
後付けGPS端末をハーベスタに装着し「KSASシンプルコネクト」での収穫作業の管理の可能性を探る
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農業が基幹産業である鹿児島県の徳之島ではサトウキビの栽培が盛んで、島全体の農地の約28%を占めています。栽培されたサトウキビは、収穫後、島内にある南西糖業(株)の製糖工場へ搬入。その後、速やかに搾汁され、原料糖へと加工されます。南西糖業のグループ会社で、自社ほ場でのサトウキビ栽培や島内の農家の作業受託を業務とする(有)南西サービスは、いち早くKSASを導入し、自社ほ場のみならず作業受託ほ場の管理にも活用。行政・JAとの連携でサトウキビ栽培のスマート農業化に取り組んでいます。今回は、サトウキビ収穫の大きな課題となっている精度の高い管理作業の構築に向けて取り組んだ「KSASシンプルコネクト」の実証についてお聞きしました。

目次

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関係者の声①

鹿児島県大島郡天城町
有限会社 南西サービス
代表取締役 
永井浩二 様

KSAS導入により、島内全域のほ場管理が実現

近年、徳之島のサトウキビ栽培は、高齢化や農家戸数の減少による収穫面積の減少、中・小規模農家が大型トラクタやハーベスタを保有していない状況等により、それぞれの農家での作業維持が難しくなってきています。トラクタ作業、収穫作業ともに委託が増加し、農業機械を保有している南西サービスや営農集団を頼る農家が増えているのが現状です。
南西サービスでは、2017年にトラクタの更新とあわせてKSASを導入しました。以前は各ほ場の植付け・生育・出荷状況を営農手帳やテキストデータで管理していましたが、KSASの導入により、Googleマップでほ場情報を管理できるようになりました。受託作業に関しても実際に作業に向かうまでのロスが大幅に減少。作業指示・管理の効率も大幅にアップしました。
その後、2019年に参画した国のスマート農業実証プロジェクトで、南西サービスで管理するサトウキビのほ場をKSASに登録。2020年からは行政、JA、製糖業関連団体などによる徳之島さとうきび生産対策本部が設立した「徳之島さとうきび農作業受委託調整センター」の受委託調整業務を受託。協力農家144軒に作業を再受託するシステムを確立し、適期作業管理によるサトウキビの単収向上に貢献してきました。

南西サービスは徳之島唯一の製糖企業である南西糖業のグループ会社

KSASを活用し島内のサトウキビ作業の受委託も行う

KSASシンプルコネクトでハーベスタの位置情報の見える化へ

KSASの導入と受委託調整センターの業務は、収穫までのトラクタ作業の管理において大きな成果を生み出していますが、収穫の際に使用するハーベスタはKSAS対応機ではないため、稼働位置をリアルタイムで確認する事ができていません。現状、稼働位置の確認はオペレータへの電話連絡や直接確認のため、特に降雨時は収穫状況の把握に時間を要し、製糖工場の稼働、停止の判断が難しい状況です。
ハーベスタの位置情報の見える化は、南西サービス、南西糖業のみならず、収穫作業を管理するJAにとっても解決すべき大きな課題です。課題解決への道筋を拓くべく、2022年から2年間にわたって行われた、徳之島町、南西サービス、南西糖業、クボタ様などによる官民連携の「サトウキビ栽培におけるスマート農業の実証実験」に参画。KSAS対応機以外の機械に装着可能な「KSASシンプルコネクト」の後付けGPS端末を南西サービスが保有するハーベスタ等に装着し、位置情報の把握が可能かについて検証しました。

間もなく収穫を迎えるサトウキビのほ場

収穫に向けハーベスタの整備が進む

■南西サービス KSAS活用のあゆみ

関係者の声②

南西糖業株式会社
徳之島事業本部 取締役
廣 敬造 様

サトウキビをいかに新鮮な状態で工場に搬入できるか

南西糖業は、徳之島に2か所ある製糖工場で島内で収穫されたサトウキビの製糖作業を行っています。原料糖に加工するまでの行程で重要となるのが、収穫されたサトウキビをいかに新鮮な状態で製糖工場に搬入するかということです。サトウキビは傷みやすく、収穫から時間が経って劣化してくると搾汁工程でロスが生じ回収率が低下してしまいます。ハーベスタの位置情報を正確に把握し、いつ、どれだけの量のサトウキビがどの工場へ搬入されるかをコントロールできれば、品質管理や操業の効率の向上につながります。

ハーベスタ位置情報の把握で状況判断がしやすく

島全体の収穫作業の調整はJAが収量管理システムを運用して担っており、我々は、各工場への1日の搬入量の調整を依頼しています。将来的に島内で稼働する約140台のハーベスタの状況が把握できるようになれば、ハーベスタが今どこにいるのか、1日に予定している量が確実に搬入されるか、また、降雨の影響等で収穫を中断し、集荷や搬入量が減る見込みか等が確認できるようになり、工場をフル稼働すべきか8割で動かすべきか等の判断もしやすくなります。後付けGPS端末をハーベスタに装着したKSASシンプルコネクトの実証は、そこへ向けての第一歩となると考えています。

南西糖業の徳和瀬工場。島内2カ所の製糖工場にサトウキビが搬入され原料糖に加工される

関係者の声③

有限会社 南西サービス
西松由美子 様

KSAS上でハーベスタの位置情報を随時確認

通常は、KSASを使って主に南西サービスや受委託センターのトラクタ作業の作業指示・管理を行っています。2023年12月から2024年3月までの収穫期は、KSASシンプルコネクトの実証で、南西サービスが保有するハーベスタのうち5台(天城町2台、徳之島町3台)と営農集団が保有するハーベスタに9台、運搬用トラックに1台、合計16台に後付けGPS端末を装着し、ハーベスタの位置情報を確認。今、どのほ場にいるか、作業は予定通り進んでいるか等をモニター上で確認しました。基本的には確認のみで、あるほ場が完了したら次のほ場へ向かってください等の指示やハーベスタの配車や運用計画はJA収穫作業部会が実施するため当社では行っていません。

次の栽培や収穫に活かせる補足情報を得られた

10分間隔で自動で位置情報が送られてくるので、ハーベスタの作業開始・終了の位置のみならず、作業軌跡も確認できました。どこからほ場に入って、どんな経路で収穫を進めたか、ほ場のどの辺りが動きにくいか等の確認もできています。おおよその作業時間も把握できたので、南西サービスとしても今後に活かせるような補足情報は得られたかと思います。KSAS対応トラクタや、ドローンの作業軌跡ほど緻密ではなくとも、ハーベスタの動きを確認できるということは、今後の作業指示や確認を考えた場合、意義あることだと思いました。

―2023年に南西サービスで行われた実証-

・KSASシンプルコネクトの後付けGPS端末をハーベスタ(KSAS非対応の他社機)に装着
・サトウキビ収穫作業時の位置情報や作業軌跡をKSAS上で確認

ハーベスタに後付けGPS端末を装着してサトウキビの収穫作業を行う

10分ごとに送信される位置情報で、ハーベスタの作業経路や作業軌跡が確認できる

島内を移動した運搬用トラックの軌跡も表示できる

関係者の声④

有限会社南西サービス
取締役
穐田 淳 様

KSASシンプルコネクト活用の可能性

今回の実証は、電波状況に左右される部分もありましたが、後付けGPS端末の装着により、従来は確認できなかったハーベスタの位置情報をリアルタイムで確認することができたのが大きな収穫でした。我々南西サービスが保有する5台と営農集団が保有する9台のハーベスタと運搬用トラック1台の位置情報を確認したのみですが、今後、KSASシンプルコネクトをより多くの島内で稼働するハーベスタに導入することで、様々な可能性が広がってくると思います。

ハーベスタの運用効率向上への期待

島内全体のハーベスタを効率的に動かせるようになり、収穫作業のコントロールがしやすくなれば、製糖工場側との連携もよりスムーズになるはずです。例えばハーベスタの配車のオペレーションを考えた場合、位置情報や集荷量の確認ができれば、製糖工場への搬入もより緻密に、より柔軟に対応できるようになるかと思います。そうしたことにより、南西サービスが稼働させているハーベスタについても、さらに効率よく運用され、ロスなく作業を行っていけることが期待できます。

島内ほぼ全域のほ場がKSASに登録されている

クボタ技術顧問の解説

株式会社クボタ
担い手戦略推進室
技術顧問 森 清文

実証から広がる新たなハーベスタの運用

今回のKSASシンプルコネクトの実証は、徳之島のサトウキビ栽培において大きな課題であったハーベスタの位置情報のリアルタイムでの把握や柔軟な運用に向け、新たな可能性を拓くものになったと思います。今回は、南西サービス保有のハーベスタ等についてKSAS上での確認にとどまりましたが、今後の可能性として、生産対策本部やJAとKSASの情報を共有し、島内全域のハーベスタに後付けGPS端末が装着されるようになると、ハーベスタの運用を担う側と、南西サービスや営農集団、そして南西糖業の3工場との連携がより効率的になることが考えられます。KSASシンプルコネクトの活用の拡大により、サトウキビほ場の作業記録に収穫作業時の情報を加えることができれば、今後、有益な情報が蓄積されることが期待できます。

野菜作をはじめ、様々な作物への活用

サトウキビのハーベスタに装着したように、後付けGPS端末はKSAS非対応の機械や、クボタ以外の機械、野菜作業機等にも装着可能です。装着により、位置情報の確認や作業履歴の取得ができるので、これまでKSAS非対応の機械で行っていたために残すことができなかった作業記録も残せるようになります。野菜作などでも稲作のようにほ場準備から収穫まで、KSASで作業記録を残すことができることで、これまで以上に様々な作物の栽培においてKSASを活用できるようになります。

資料ダウンロード

SR241106_鹿児島県KSASシンプルコネクト

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